第168章

涼やかな風が吹き抜けた。

天瀬姫代の顔を見た瞬間、島宮奈々未はどこで彼女を見たのかを鮮明に思い出した。

丹羽光世の書斎だ。彼のパソコンのモニターに映し出されていたのが、まさに天瀬姫代の写真だったのだ。

彼の心の中で、彼女は特別な存在なのだ。

「奈々、少しは良くなったか?」丹羽光世はしゃがみ込み、島宮奈々未の乱れた前髪をそっと撫でつけた。

「全然良くないわ」島宮奈々未は胸元を押さえ、さらに頭に手を当てながら、じっと丹羽光世を見つめた。「胸も痛いし、頭も痛い。もう、どこもかしこも痛いの」

その口調はどこか子供っぽく、ほんのりと朱に染まった頬が、艶やかでありながらも愛らしい雰囲気を醸し...

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